「パパ、月が見たい」
子どもにそう言われて、スマホで撮った小さな月の写真を見せてお茶を濁したことはないでしょうか。筆者も最初はそうでした。ただ、何度か同じことを言われるうちに「一度、本物を見せた方が早いな」と思うようになり、天体望遠鏡を調べ始めました。
ちょうどキャンプやアウトドアでも活用できるかもしれない、という下心もありました。そこで選んだのが、スコープテックの「ラプトル50」です。この記事では、実際に東京23区内で使ってみて分かったことを、良かった点も面倒だった点も含めて書いていきます。

こんな人には向いていない記事です
先に外しておくと、この記事は「土星の環や木星の縞を本格的に観測したい人」向けではありません。メーカーは月のクレーター以外の天体についても見えるとしていますが、筆者が実際に確認できているのは今のところ月が中心です。惑星の細部まで追い込みたい方は、後述するアトラス60やアトラス80といった上位機種のレビューを探した方が確実です。
もう一つ、「子どもに買い与えて、あとは自分で遊ばせたい」という方にも向いていません。理由は本文で詳しく書きますが、6歳が一人で天体を導入するのは、少なくとも我が家では難しかったからです。
選ぶときに見るべき3つの基準
天体望遠鏡は数字が並んでいて分かりにくいのですが、初心者が最低限見ておきたいのは次の3点だと感じました。
- 口径と焦点距離:口径が大きいほど暗い天体まで見え、焦点距離が長いほど高い倍率を出しやすくなります。月だけなら50mmでも十分ですが、惑星の模様まで狙うと差が出てきます。
- 架台に微動装置があるか:倍率を上げると天体は視野からすぐ外れます。微動ハンドルがない機種は、手で少しずつ動かして追いかけることになります。
- 重さと三脚の伸縮:持ち出す前提か、家に据え置くかで最適解が変わります。伸縮しない三脚は、子どもが覗くときの高さ調整ができません。
商品情報・比較表
スコープテックの4機種を並べると、違いが分かりやすくなります。4機種とも対物レンズは日本製のアクロマートレンズ(モノコート)、鏡筒はABS樹脂製で、生産国はいずれも日本です。
| 項目 | ラプトル50 | ラプトル60 | アトラス60 | アトラス80 |
|---|---|---|---|---|
| 口径 | 50mm | 60mm | 60mm | 80mm |
| 焦点距離 | 600mm | 700mm | 800mm | 1000mm |
| 付属接眼レンズ | K.20mm(30倍)/F.8mm(75倍) | K.20mm(35倍)/F.8mm(87.5倍) | K.20mm(40倍)/F.12.5mm(64倍)/Or.6mm(133倍) | K.25mm(40倍)/Or.9mm(111倍)/Or.6mm(167倍) |
| 接眼部の径 | 24.5mm | 24.5mm(31.7mmにも対応) | 24.5mm(31.7mmにも対応) | 31.7mm |
| 架台 | 経緯台(微動装置なし) | 経緯台(微動装置なし) | 経緯台(上下・水平とも微動装置付き) | 経緯台(上下・水平とも微動装置付き) |
| 三脚 | 金属製/伸縮なし(地面から架台まで90cm) | 金属製/伸縮式(76〜125cm) | 金属製/伸縮式(76〜119cm) | 金属製/伸縮式(87〜133.5cm) |
| 総重量 | 1.5kg | 2.5kg | 4.7kg | 6.7kg |
| 保証期間 | 1年 | 3年 | 3年 | 3年 |
| 梱包箱サイズ | 91×17×11cm | 88×25×15cm | 94×26×15cm | 106×36×18cm |
※仕様はメーカー公表値です。価格・付属品・在庫状況は変更されることがあるため、購入前に商品ページで最新情報をご確認ください。
ラプトル50は三脚の伸縮機能がなく、地面から架台までの高さは90cm固定です。大人が立って覗くにはちょうどいい高さですが、小さい子どもには少し高くなります。
実際に使ってみて感じたこと
なぜ買ったか
きっかけは完全に息子の「月が見たい」の一言です。加えて、キャンプやアウトドアに持ち出せたら面白いだろうという期待もありました。結果的に、今のところ活躍しているのは自宅の駐車場です。
実際の使用感
一番驚いたのは、東京23区内の市街地でも月のクレーターがはっきり見えたことです。街灯もマンションの明かりもある駐車場ですが、月に関しては光害はほとんど気になりませんでした。
組み立ても迷う場面がなく、慣れてからは、望遠鏡を出してから月にピントを合わせるまで2〜3分程度です。この「さっと出せる」感覚が想像以上に良くて、夜に窓の外を見て「今日、月出てるね」となったタイミングで、そのまま持ち出せます。天体観測というより、散歩のついでのような気軽さで使えています。1.5kgという軽さが効いている部分だと思います。
気になった点
一方で、6歳の息子が自分で調整するのは難しかったです。のぞき穴ファインダーで大まかに月を捉えて、接眼レンズを覗きながらピントを合わせる、という一連の流れは、大人が横についてやる前提だと考えた方がいいと感じました。息子の役割は「覗いて驚く」担当です。それはそれで目的は達成しているのですが、「子どもが自分で操作する望遠鏡」を期待していると、最初は少し面食らうかもしれません。
▼今回購入したのはこちら
よくある不満とその対処
実際に使って引っかかった点と、その対処を書いておきます。
- 収納ケースが付属しない:これは地味に困りました。裸のまま部屋の隅に立てかけておくのも気が引けるので、別途ケースを用意する必要があります。
- 対処法:届いたときの梱包箱(ラプトル50は91×17×11cm)をそのまま保管用に取っておくと、当面はしのげます。ただ、出し入れのたびに箱を開け閉めするのは面倒なので、筆者はカメラの三脚・一脚用ケース(100cm・厚めのクッション入り)を買い足しました。望遠鏡専用の製品ではなく、三脚や楽器、釣り竿といった長物を運ぶためのケースです。ラプトル50は鏡筒の全長が58cm、三脚の脚の長さが89cmなので、100cmサイズを選んでおけば長さは足ります。実際、鏡筒と三脚をまとめて1本に収めることができました。同じように探す場合は、まず全長で候補を絞るのが早いと思います。
- スマホでの月の撮影が難しい:接眼レンズにスマホのカメラを当てて撮る「コリメート撮影」は、レンズの位置がずれると影が出てしまい、慣れるまで時間がかかります。
- 対処法:筆者は結局、メーカー純正のクリップアダプタを買い足しました。ラプトル50・ラプトル60・アトラス60専用で、付属のK.20mm接眼レンズにかぶせて、スマホのカメラと接眼レンズの位置を合わせるためのパーツです。ただし公式には「スマホの縁からカメラレンズ中心までが23mm以下」という条件があり、レンズが複数並んでいる機種はどのレンズに合わせるかの調整も必要になります。筆者の場合、いちばん相性が良かったのはサブ機のiPhone SE(第3世代)でした。SE3は背面カメラが1つなので、アダプタの穴とレンズの中心を合わせるだけで済みます。カメラが複数並んだ機種で使う場合は、どのレンズに合わせるかの見極めが必要になるので、古いスマホが手元に余っているなら、それを撮影専用にしてしまうのも手だと思います。
- 倍率を上げると月がすぐ視野から逃げる:ラプトル50の架台には微動装置がないため、高倍率では手で少しずつ追いかけることになります。
- 対処法:まず低倍率のK.20mm(30倍)で導入し、位置が安定してからF.8mm(75倍)に差し替える手順にすると、だいぶ楽になります。
- 子どもの背が届かない:三脚が伸縮しないため、小さい子は覗きにくい高さになります。
- 対処法:踏み台や小さな椅子を一緒に持ち出すと解決します。我が家は駐車場に折りたたみの椅子を持って出ています。
状況別のおすすめ
- まずは月を見せてあげたい方:ラプトル50で十分だと感じています。1.5kgと軽く、思い立ったときに数分で出せる手軽さが、結局いちばん使用頻度に効きました。
- キャンプに持ち出したい・少し長く使いたい方:ラプトル60は三脚が伸縮するため、地面が平らでない場所や、子どもの身長に合わせた高さ調整がしやすくなります。保証期間も3年と長めです。
- 土星の環や木星の模様まで狙いたい方:アトラス60は最高133倍まで対応し、上下・水平とも微動ハンドルが付いています。メーカーは10歳以上なら自分で組み立て・操作ができる機種として位置づけているので、お子さんが小学校中学年以上なら候補に入ると思います。総重量4.7kgと重くなる点は要検討です。
- 大人がこの先も長く使うつもりの方:アトラス80は口径80mm・焦点距離1000mmで、最高166倍前後まで対応します。メーカーの対象目安は10歳〜大人。ただし総重量6.7kg、梱包箱も106cmと大きくなるので、毎回ベランダや駐車場まで運ぶ使い方には向きません。据え置きで使える場所がある方向けです。
買ったあと、最初にやること
到着したら、いきなり月に望遠鏡を向けるのはおすすめしません。日が暮れてから、街灯や電柱の明かりなど遠くにあるはっきりした光を目印にして、まずピント合わせを練習しておくと、本番がかなりスムーズになります。のぞき穴ファインダーと接眼レンズの見え方の関係を、慣れた対象で先に体で覚えておくイメージです。なお、望遠鏡や双眼鏡で太陽を直接のぞくと目を痛める危険があるため、組み立てや練習も含めて、屋外での使用は日没後に限定してください。
観察する日は、満月よりも半月前後を狙う方がクレーターの陰影がくっきり出ます。「せっかくなら満月に」と思いがちですが、実際に見比べると印象がかなり違います。
そして最後に、収納場所とケースを先に決めておくこと。ここを決めておかないと、玄関に立てかけたまま使わなくなる、というよくあるパターンに入りかねません。
この記事は実際の購入・使用経験をもとに作成しています。価格や仕様は変更される場合があるため、購入前に最新情報をご確認ください。


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